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特集 MAROワールド&MAROカンパニー

王子ホールマガジン Vol.20 より

王子ホールが『まろ』の愛称で親しまれているN響コンサートマスター、篠崎史紀とつくる音楽サロン、MAROワールド。今や王子ホールの 看板コンサートとしてすっかりおなじみになったこのシリーズでは、毎回特定の作曲家にスポットを当て、ときには斬新なコラボレーションを交えつつ、充実した室内楽をお届けしています。出演者の大半はこれからのクラシック音楽シーンを支えていく実力派の若手アーティストです。2007年秋の「Vol.8 バッハ」の回では、その面々を中心に結成した弦楽合奏団、MAROカンパニーがデビューしました。プロフィールをご覧いただければ一目瞭然、各地のオーケ ストラのトップ奏者を中心に、よくここまで集まったものだと感心するようなオールスター・チームです。MAROカンパニーの2回目のコンサートを控えた本号では、個性豊かな若手奏者たちをご紹介いたします。

**MARO World History**


2007年10月25日「Vol.8バッハ」より

 

2004年3月15日 Vol.1 シューベルト
篠崎史紀、伊藤亮太郎(ヴァイオリン)、佐々木 亮(ヴィオラ)、 藤森亮一(チェロ)、上森祥平(チェロ)
共演:篠井英介(朗読)

2004年10月30日 Vol.2 モーツァルト
篠崎史紀、伝田正秀(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、伝田正則(チェロ)
市川雅典(コントラバス)、阿部 麿、猶井正幸(ホルン)
共演:水と油(マイム)

2005年3月19日 Vol.3 ベートーヴェン
篠崎史紀(ヴァイオリン)、清水和音(ピアノ)、上森祥平(チェロ)
共演:岸田今日子(朗読)

2005年10月2日 Vol.4 ブラームス
篠崎史紀、清水醍輝(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、桑田 歩(チェロ)、若林 顕(ピアノ)
共演:華道遠州宗家 貞陽斎 芦田一寿(華道)

2006年3月19日 Vol.5 シューマン
篠崎史紀、伝田正秀(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)、清水和音(ピアノ)
共演:中嶋朋子(朗読)

2006年9月1日 Vol.6 ドヴォルザーク
篠崎史紀、西江辰郎(ヴァイオリン)、佐々木 亮(ヴィオラ)、宮田 大(チェロ)、吉田 秀(コントラバス)
共演:シルエットフェア(影絵)

2007年2月21日 Vol.7 モーツァルト Part.II
篠崎史紀、伝田正秀(ヴァイオリン)、佐々木 亮(ヴィオラ)、木越 洋(チェロ)、西山真二(コントラバス)
共演:高橋 淳、太田ゆかり(マイム)

2007年10月25日 Vol.8 バッハ *MAROカンパニー Debut
篠崎史紀、伊藤亮太郎、清水醍輝、伝田正秀、戸澤哲夫、西江辰郎(ヴァイオリン)、
佐々木 亮、鈴木康浩(ヴィオラ)、上森祥平、宮田 大(チェロ)西山真二(コントラバス)、鈴木優人(チェンバロ)
共演:古部賢一(オーボエ)

2008年3月21日 Vol.9 チャイコフスキー
篠崎史紀(ヴァイオリン)、清水和音(ピアノ)、上森祥平(チェロ)、原 日向子(ハープ)
共演:宮本益光(朗読)

 

まろが語るMAROカンパニー

いい若手演奏家たちとMAROワールドを続けているうちに、もうちょっと大きい編成でこの空間を楽しみたいと思うようになったんですね。それが2007年の「Vol.8 バッハ」の回で、弦楽合奏団MAROカンパニーとして結実しました。最高でしたね。みんな個性が強いんだけど、オーケストラやってる人がほとんどだから、 協調性もすごくある。その中で自分をアピールしてくるから面白いですね。聴いているお客さんよりも、ステージ上の人間のほうが楽しんじゃってるぐらいだから。今度の「Vol.10 ヴィヴァルディ」ではメンバーのソロがたくさんあるから注目ですよ。
2009年から、王子ホールでお昼にやっている「銀座ぶらっとコンサート」で、MAROカンパニーのメンバーが中心の『お昼の名曲サロン』っていうシリー ズができるんですよね。
こういう発表の場を演奏家が自分でつくるのは非常に難しいんです。自主公演をやると準備に忙しくて演奏が片手間になっちゃう恐れがあるし、頼まれた仕事の場合それをこなすだけの単なる仕事人になっちゃう恐れもある。そうじゃなくて自分が考えたものを構築しながら、それをバックアップしてもらえるような関係ができると理想的。王子ホールのプロデューサーの星野さんは、演奏家がものを考えるプロセスを一緒になってサポートしてくれる。これこそ自分たちに本当に必要なキャリアなんですよ。
僕たちがやってるクラシックは伝承文化だから、次にバトンタッチする方向、継続できる方向を考えていかなきゃいけないんですよね。この先MAROカンパ ニーのみんなは、自分たちがどう成長して、次の世代にどうバトンタッチしていくかっていうのを考えなきゃいけない。いま受け継いでいるものを自分の世界をとりこみつつ、次に伝えていく。そうしてたとえば100年後に、MAROカンパニー100周年記念なんてあったら面白いよね。

MAROカンパニーが語るまろ

2007年10月25日、奇しくも王子ホール開館15周年の記念日に開催された「MAROワールド Vol.8 バッハ」。このときに産声をあげた弦楽合奏団MAROカンパニーは、メンバーのほとんどがこれまでMAROワールドを支えてきた若手演奏家によって構成されています。今回はMAROカンパニーのメンバー、伝田正秀(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)のお三方に集まって いただき、大勢の若手を束ねるボス篠崎“まろ”史紀について、MAROワールドについて、さらには彼らが中心となって展開していくお昼の室内楽シリーズに ついて、大いに語ってもらいました。いずれも次の「Vol.10 ヴィヴァルディ」でMAROワールドの出演回数が6回(上森)、5回(伝田、鈴木)となる古参メンバーです。

――皆さんMAROワールドがスタートした2004年から出演なさっていますけど、まろさんと知り合ったのはいつなんですか。

鈴木 8~9年前ですね。ちょうどまろさんが若手のヴィオラ奏者を探していて、引き合わせていただいたんです。まろさんは既にコンサートマスターで、こっちは仕事を始めたばかりだったから萎縮してたんですけど、最初から九州弁ですごくフレンドリーに接してくれました。だから恐いとか、そういうイメージは持たなかったですね。

上森 僕も同じぐら いの時期でしたね。関西のホールでやっていたアンサンブルの公演に何回か出させていただいて、そのうちの1回にまろさんも入っていたんです。まろさんって身につけてるものがヘビ皮だったり、背広の裏地が他の人とはちょっと違ったり、ここまでキャラクターの立ってる演奏家が日本にいるのか!って(笑)。

鈴木 でも威圧的じゃないよね。

上森 全然。

鈴木 最初から友達のように喋ってくれるんですよ。こっちは学校出たてのペーペーなのに、すごくフレンドリーなんです。やっぱりプロオケとかに入ると、どうしてもベテランとの壁ができちゃうんですけど、まろさんの場合それがまったくなかっ た。

上森 まろさんの方から話しかけてくれるよね。

鈴木 そうだよね。 祥平なんてそうじゃないと喋らないもんな(笑)。

伝田 僕はウィーンにいるときが初めてでした。まろさんがウィーンにいるから会いに行こうって友達に誘われて、レストランみたいなところに行ったんですけど、かなり緊張しましたね。気さくに喋ってくださるんだけど、もう緊張しちゃって。

鈴木 うそぉ、でんちゃん本番だって緊張しないじゃん!

伝田 いやいや、今まで会った人の中で一番緊張した(笑)。

鈴木 同業者だからってのもあるのかな? まあ気さくでもオーラというか、存在感があるからね、まろさんには。

――MAROワールドに参加するきっかけは?

伝田 日本に帰ってきたのがちょうどMAROワールドが始まるくらいの時期で、声をかけていただいたんです。

上森 僕は 「Vol.1 シューベルト」からですけど、以前から清水和音さんと一緒にトリオをやらせてもらって、それがきっかけでお話をいただきました。「曲を演奏して終わりってい うだけの演奏会じゃなくて、そのバックグラウンドとか、作曲家の人となりに触れられる演奏会をしたいんだけど、どう?」みたいなことを言われて、「じゃあ ぜひぜひ」っていうことで。僕はベルリンで勉強していたんですけど、ヨーロッパはわりとそういう演奏会があるんですよね。

鈴木 まろさんって、電話かけてたときに「ヤッホー。元気? ねぇ、まろと遊ばない?」って言うんです。

上森 「ヤッホー」 は必ず入るよね(笑)。

鈴木 「遊ばな~い?」っていうのは、どうやら一緒に演奏会をしようっていうことらしいんですけど。

――伝田さんにも同じようにきましたか?

伝田 そうですね。「ヤッホー。でんちゃん、楽しくお小遣い稼がない?」とか「ちょっと九州旅行いかない?」とか(笑)。

鈴木 それまたストレートだな(笑)。

――そうやって召集された皆さん、本番に向けての音作りはどういう流れでやるんですか?

鈴木 まろさんはだいたい輪郭をパーッと作って、メンバーにだいたい同じ方向をむかせておいて、「じゃあ流れはこんな感じでいいとね?」みたいな。練習するときはあれこれ説明しないですね。音楽で示すのがとてもうまいんですよ。

上森 音楽の方向性っていう意味では、わりと話の合う人たちを選んでると思うので、意見が大きく異なることはないですね。あとは理屈でどうこうっていうより、演奏で示すタ イプ。

鈴木 MAROワー ルドの企画をやってると、すごい知識人だなって思うな。話のネタとかね。まずスピーチがうまいじゃないですか。MAROカンパニーでやったこの間の 「Vol.8 バッハ」の回も、いろいろおもしろい話をしてたし。ただ、こっちに話をふってくるのだけは勘弁と思ったけど(笑)。

上森 最近とくに増えてるよね。

伝田 いきなり 「バッハ弾いて」とかね。

上森 あれはないよな!

――そうでした。MCのときに、いきなりバッハの無伴奏チェロを弾いてって言われたんですよね。

鈴木 いやぁ祥平はオトコだと思ったよ、あのとき。

上森 あのね、事前にその予感はあったんですよ。本番前にみんなでワイワイ喋ってるときに、まろさんが「今日は何かあっていいんじゃない? 誰にいこうかなぁ?」って。

鈴木 チラチラと一人ひとり見ながらね。

上森 こわかった。

鈴木 あのメンバーを前にして一人で弾きたいと思わないな。きっとコンクールより緊張する(笑)。

――楽屋にいるときのまろさんってどんな感じですか?

上森 あえてドアを開けたままにしてますね。「みんなおいでよ」って感じで。

鈴木 で、誰も行かないと「なんで来ないの?」と。

上森 ちょっと拗ねた感じになる(笑)。

――みんな集うとどんな話になるんですか?

上森 食べ物の話とか多いですね。ドイツの有名なお菓子をまろさんが持ってきてくれて、「おれは昔これをよく食べててね、作ったりもするんだよ」なんて話になったり。

――他にもエピソードありますか?

鈴木 僕は怖い話がすごく苦手なんですよ。旅先の ホテルでも、暗くして寝るのがいやだから電気もテレビもつけて寝るという話をしたら、まろさんがすっごい食いついてきて。

伝田 MAROワールドを九州でやったときに、バスの中でずっとホラー系の話をしてましたね。

鈴木 夜みんなで食事して帰ってきて、じゃあ寝よっかなと思ったら、まろさんから「ヤッホー、このサイト面白いから見てごらん」ってメールが来たんですよ。何気なく見たら心霊系のサイトで、結局その日は寝れなっちゃってさ……。

上森 そういういたずら大好きだよね。

鈴木 また別のときは、公演が終わったあとロビーに行ったら、でんちゃん目当ての女性のお客さんがたくさんいたんですね。それからしばらくは「でんちゃんはモテていいなぁ!」っていじられてましたね。

伝田 でも生徒のお母さんとかなんですよ。

鈴木 ってあくまで言い張るんだけど。

――いやぁ、どうでしょうね。

伝田 たまたまです。別にそういうんではなくて……。

鈴木 ね、こういう反応を楽しむためにやるんです(笑)。祥平は何でいじられてるの?

上森 本番でいきなり弾けとか言われたり(笑)?

――今度の「Vol.10 ヴィヴァルディ」は、昨年のバッハに続いて、MAROカンパニーが出演しますね。メンバーはオーケストラのコンマスやらトップ奏者が集っていて、若手オールスターですよね。

鈴木 若い奏者をあれだけ集められる人はほかにいないんじゃないですか?

上森 そうなんだよ。まろさんほど面倒見のいい人はいないよね。だから「ヤッホー」で召集されるわけですよ。

鈴木 「この日来てくれる?」って訊かれたら、みんな仕事の調整をつけて来るんですよ。

伝田 うん。やっぱり楽しいから。

上森 楽しい雰囲気の演奏会ってのはあんまりないんですよ、実際。

鈴木 メンバーは同世代が多いから、仲もいいしね。

上森 年代が違ってもそういう雰囲気は残ってるよね。清水和音さんが入ったりベテランの方々が入っても、「楽しもうよ」っていう姿勢はそのまま。それって普通の演奏会だとなかなか生まれないんですよ。 「ちゃんとしなきゃ!」って緊張感のほうが強い。

鈴木 まろさんのすごいところはそこだよね。親分としてピシッとやることはやりつつ、みんなをラクにさせてくれる。この匙加減は同じコンマスとしてどうよ、でんちゃん?

伝田 いやあ、とても真似できないです。僕とはあまりに次元が違って、参考にするとか真似するとか、そんなレベルじゃないですよ。

――キャラクターも違いますしね。

鈴木 仲良く楽しくだけでやると、どうしてもだれちゃうんだけど、まろさんの場合、やることはやって、なおかつ笑いありという感じですね。

上森 それは1回目のMAROワールドのときからしきりに言っていましたね。「日本ではこういう演奏会ってなかなかできなくてさ、でもやりたいじゃない。祥平はヨーロッパで勉強してるからわかるだろ?」って。向こうってけっこうそういう、楽しいから音楽やってるって雰囲気あるじゃない。

鈴木 それはあるよね。音楽をすごく楽しんでいるって。演奏者はすごく楽しんで遊んでるんだけど音はちゃんとしている、締めるところは締めるっていう。自分たちがまず楽しんで弾くってことは大事だよね。MAROワールドではそうやって楽しんでいるけど、世の中には楽しく音楽できてない人もいるわけですからね。どうしても厳格 に、笑いなしで、ズレないようにとか、軍隊的にというパターンが無きにしもあらずですからね。

――来年から「銀座ぶらっとコンサート」で、『お昼の名曲サロン』と題した企画をMAROカンパニーの皆さんを中心にやってもらいますけど、こんどはまろさんのリードがない中で、皆さんがアディアを出していく番ですよ。

鈴木 そうですよね……そこをどうしようかね。

上森 まず雰囲気だよな。MAROワールドの雰囲気を受け継いでいきたいですね。客席との距離の近さとか。

鈴木 お客さんがすんなりと音楽を聴ける雰囲気を作っていきたいよね。

――曲紹介のMCとかもやることになるでしょうが。

上森 「どどどどうも、こんにちは……(間)……じゃあ弾きます」みたいになるよ。

鈴木 早いよ (笑)! でもお客さんはMCがあったほうが聴きやすいですよね。あらかじめ文を考えておこうか。祥平書くの好きでしょ?

上森 書くのとしゃべるのは全然違うよ。やっぱりまろさんみたいにスラッと出てくるには、頭の中でちゃんと理解されてないとね。いざっていうときに言葉にならないもんね。

伝田 あれだけしゃべれないですよ。

鈴木 いや、意外といけてるよ。でんちゃん独特の癒しの世界があるし。

上森 でもね、 Vol.1のシューベルトの回でさ、終わったあとまろさんが「おれ、声震えてなかった?」なんて訊いてきてたんだよ!

鈴木 へぇ! そうなんだ……やっぱり慣れなんですかね。

上森 喋るの本当に難しいもんな。黙って弾いてるほうが全然ラク。

鈴木 弾くのは楽しいだけだからね。急に弾けって言われない限り(笑)。

(文・構成:柴田泰正 写真:藤本史昭)

【公演情報】
MAROワールド Vol.10 “ヴィヴァルディ”
2008年9月26日(金) 19:00開演(18:00開場) 
全席指定 6,000円 完売

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